有限会社 佐藤靖生建築研究室一級建築士事務所
Fuchu, Tokyo — since 1988

木造住宅の耐震診断と補強設計。
その報告書を、自分で自動化しています。

東京都府中市の一級建築士事務所です。1988年に意匠設計事務所として始め、2006年から耐震診断・補強設計を二本目の柱にしました。府中市を中心に、約20年にわたって住宅の診断と調査を続けています。

近年は、その実務そのものを道具にすることに時間を使っています。調査報告書の自動生成、手書きスケッチから診断用平面図を起こす仕組み、住宅の記録を改ざんできない形で残す試作。いずれも受託の片手間ではなく、自分の現場で使うために作り、使いながら直しています。

このページには、その中身を書きます。できていないことも書きます。

1988年
創業(意匠設計)
20年
府中市での耐震診断
60枚
写真台帳を数分で生成
(従来は数時間)
3市
担当区分
府中・小金井・調布
Contents
  1. 01耐震診断・補強設計府中市/小金井市/調布市
  2. 02調査報告書の自動生成数時間 → 数分
  3. 03図面をJSONで持つDXF / SVG 両出し
  4. 04見える家プロジェクト図面・3Dスキャン・記録
  5. 05建築鑑定・リフォーム詐欺府中警察との連携
01 — Seismic Diagnosis

耐震診断・補強設計

(一社)東京都建築士事務所協会 南部支部の業務として、耐震診断アドバイザー、木造住宅の耐震診断、ブロック塀等の安全調査を担当しています。担当区分は府中市・小金井市・調布市。

対象
木造在来工法の戸建住宅、ブロック塀・組積造の塀
評点算定
HOUSE-DOC(耐震診断ソフト)による上部構造評点の算定
成果物
耐震診断結果報告書/報告写真台帳/写真説明書類/補強設計図
助成
府中市の耐震診断・改修助成に対応(申請様式にあわせて作成)
進捗管理
南部支部の業務進捗管理システムへ入力

診断は、床下と小屋裏に入るところから始まります。図面が残っていない家がほとんどで、現況の柱・壁・開口を実測して起こし直すことから仕事になります。この「起こし直す」工程が重いので、道具を作りました。それが 02 と 03 です。

02 — Report Automation

調査報告書の自動生成

耐震診断やブロック塀調査の報告写真台帳は、長らくCAD上での手作業でした。写真を貼り、ラベルを置き、ページを組む。1物件で数時間かかり、作り方が担当者に属人化していました。

2026年6月から7月にかけて、3物件を通してこの工程を組み直しました。現在は、写真60枚・4章・12ページの台帳を、建築士の入力作業「写真タイトルの記入」だけから数分で生成できます。

核になっているのは、写真タイトル1行

建築士がiPhoneの写真アプリで、各写真のタイトル欄にこの1行を書きます。これだけが人間の入力です。

IMG_8814→基礎_鉄筋の計測_経過観察_近景8815とセット12 └元番号 └内容 └判定 └ペア相手 └通し番号

この1行が、選定・判定・並び順・ペア関係のすべてを兼ねています。書き出し時にXMP/IPTCメタデータへ埋め込まれ、機械が読める形になります。判定が書かれた写真だけが採用されるので、タイトルを書く行為がそのまま「この写真を使う」という意思表示になります。

要改善 経過観察 良好

機械がやっていること

現場では時刻を宣言しながら録音します。「ただいま10時29分。基礎の鉄筋の有無を金属探知機にて計測します」。この音声と写真の撮影時刻を突き合わせることで、どの写真が何を写しているかが後から復元できます。

人は見て、考えて、判断する。
機械は、清書・整理・作図をする。

判定そのもの、指摘箇所の描き込み、実測値の確定、総合所見と改修方針。これらは意図的に人間に残しています。自動生成物にはすべて「下書きであり建築士の確認が前提」と赤字で明記しています。

Field Notes

うまくいっていないこと

  • 写真タイトルの記入が、唯一の人力ボトルネックです。1枚ずつ入力するため、判定の書き忘れと意図的な不採用の区別がつきません。現状は機械が除外リストを出し、人間が確認しています。
  • 写真100枚を超える一括処理は未検証です。
  • 自治体様式(府中市「ブロック塀等安全対策」チェックポイント)への自動転記は未着手です。
  • HOUSE-DOC の評点計算との連携は手動のままです。
  • 説明文の品質は文字起こしの品質に依存します。数値の聞き間違いは機械には判定できないため、要確認事項として赤字で人間に返す設計にしています。
  • 仕様値が複数の指示書に分散し、古い値が混ざる事故が一度起きました(遠景の縮小率 52% → 39%)。単一ソース化が運用課題です。
03 — Drawings as Data

図面をJSONで持つ

耐震診断の平面図に要る情報は、柱・壁・開口の3点だけです。意匠図の情報量は要りません。そこで図面そのものではなく、数値データ(JSON)を原本にしました。

plans/*.json ─┬─→ plan_dxf.py ─→ *.dxf CAD取り込み用 └─→ plan_svg.py ─→ *.svg 画面・印刷での確認用

形を直したいときは、数値を直すだけで済みます。CADデータと確認用画像が必ず一致します。基準寸法は910mm(半間)。通り芯は X1・Y1 と名前で持ち、柱の見付は105mm。補強箇所は色と幅と芯からのずらし量を持たせ、DXF上では塗りつぶしで「図面の上から塗り固める」表現になります。

通り芯と柱位置を示した確認用の平面図。X1からX6、Y1からY11の通り芯上に柱28本が黒丸で示されている。
確認用の出力例。通り芯と柱位置だけを描いた図。右端の赤字は耐震診断ソフト側の記号で、診断書の壁一覧と図面の座標を突き合わせるための対応表を兼ねています。

逆向きの道具もあります。既存の意匠図DXFから通り芯の実座標を読み取り、診断書PDFから壁の一覧を取り出して、両方を突き合わせて補強レイヤ付きのDXFを書き出す。JW_CADを開かずに目で確認するためのPNG出力も用意しています。

04 — MIERU IE Project

見える家プロジェクト

住宅の情報は「見えない」ままにされています。診断履歴も、改修履歴も、点検記録も、家には残りません。次の持ち主に渡るのは、建物と登記だけです。

一方で、見えなくていいものは筒抜けになっています。図面は見積のために工務店へ渡り、そこから下請けへコピーされ、間取りと住所と施主名がセットで出回ります。それが今は「致し方ない」とされています。

「図面は、どこまで旅をする?」と題した図解。設計事務所から工務店、そこから大工・建具屋・電気設備へと図面がコピーで拡散していく流れと、鍵つき図面・閲覧の見える化・止められる仕組みという3つの対策を示している。
「見える図面」構想。図面に鍵をかけ、誰がいつ見たかを記録に残し、期限が来たら失効させる。完璧な防御はできませんが、守る姿勢を仕組みにすることはできます。

取り組んでいること

記録の試作は動く形まで作りました。譲渡不可型のスマートコントラクトを用意し、PDFでもCADデータでも3Dモデルでも、ファイルのSHA-256ハッシュを刻んで、同じファイルを入れ直すと「一致・改ざんなし」と表示されます。3Dスキャンデータは21.3MBから1.27MBまで軽量化しても、形状と実寸を保てることを確認しました。

建築士向けに言い換えると、ウォレットが実印、ハッシュが書類の指紋、刻印が登記、ガス代が登録免許税にあたります。

Field Notes

うまくいっていないこと

  • 3Dスキャンは、室内に障害物があると精度が上がりません。家具のある実際の住宅で、測量として使える精度をどう確保するかが未解決です。
  • 記録の仕組みは練習用のチェーン上での試作段階です。本番運用には切り替えが要ります。
  • そもそも、この記録に資産価値評価としてどういう法的位置づけを与えられるのか。ここは専門家の確認が要る領域で、まだ答えを持っていません。
  • 「見える図面」は構想であって、実装はこれからです。
05 — Expert Assessment

建築鑑定・リフォーム詐欺

「屋根が傷んでいる」「このままでは危険」と突然訪ねてくる業者があります。高齢の親御さんを持つご家族から、府中警察との連携も含めてご相談を受けています。

一級建築士が現場を見て、何が行われたのかを書面にします。ご家族からのご相談も承ります。

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